翻訳に関するあれこれ

今回は翻訳について書いてみる。

公私問わず結構翻訳することがあるのだが、今回はそのことについて書いてみたい。(ただし、翻訳を専業とする翻訳専門家ではないので、そのあたりは少し含んで読んで欲しい。ただ、翻訳をアウトソースすることも多く、このあたりの流れはある程度は掴んでいる。)

翻訳の方法

ベタ翻訳

支援ツール(これらについては後述)などを使わない方法で、そのままテキストファイルなどを翻訳する方法。一番大変な方法だが、画像や、プロテクトされたPDF、果てはOCRできないクオリティの印刷物を翻訳するにはこの方法しかなかったりする。当然手間がかかるので翻訳会社などに頼む場合、支援ツールが使えるか否かにより納品までの時間はより長くなり、高くなる。(逆に翻訳会社に翻訳を頼む場合、元ソースが編集不可のものである場合は一度翻訳元の言語で編集可能なフォーマットに落としたほうが早く安くなる。)

編集できるフォーマットであってもソースコードのコメントを訳してほしい、というような場合など非翻訳部分が多く含まれる場合はやはり翻訳が部分のみを抽出して渡した方が安くなる。(そもそも原文の単語数でコストが決定される場合が多いので・・・・・・。)

検索支援ツールを使用した翻訳

ベタ翻訳は大変で、時間もかかるので、その負担を軽減するために開発されたのが各種の検索支援ツール(CAT — Computer Assisted Translation)ツール。Google Translateみたいな機械翻訳をイメージするかもしれないが別物、とはいえ、機械翻訳は翻訳のベースとして使用することはあるので、関連した技術とも言える。商用ではTRADOSなどが有名。(結構お高い)無料のものではOmegaTなどがある他、Googleもウェブアプリとして、Google Translator Toolkitを提供している。なお、フォーマットなどもタグ化されるので、例えば、太字などの装飾が行われている場合でも翻訳結果にそれを反映させることができる。前述のように機械翻訳を組み合わせて使えるので、その翻訳結果が提示するコンテキストを汲み取り、意味が通るように修正しながら作業を行うことにより、効率が大幅にアップする。対象文書の機密具合で機械翻訳が使用できない場合、時間とコストが上がる。(最近、安く翻訳してくれる翻訳会社が増えた背景にはこういった技術が使用できる、という背景があるように思われる。)

翻訳支援ツールは翻訳文(文節)を翻訳メモリと呼ばれるファイルに保存する。これはデファクトスタンダードがあって、TMXというXMLファイルが広く使われている。翻訳メモリを使用することにより以下の利点が生まれる。

  1. 同じ原文が提示される場合、以前の翻訳結果が再利用できるので、何度も同じ原文を翻訳する必要がなくなる。
  2. 上記に関連して、似た原文がある場合、それも提示されるので、訳文のばらつきを抑えることができる。
  3. 同じ原文の更新版が提供された場合、差分を取る手間を省き、以前の翻訳文を再利用できることができる。
  4. 複数の訳者がいる場合、共有することができる。

翻訳支援ツールには単語集機能が大抵装備されていて、単語が登録されている場合、その訳文を表示してくれる。専門分野で翻訳が必要な場合は、文中に現れる分野で広く使われている対訳があればあらかじめ訳者に提供しておくと翻訳の精度が高くなる。(こちらは共通フォーマットはないので、CSVなどリストとしてオーガナイズした形で準備するとよい。)

翻訳の質について

ほとんどの翻訳会社はいろいろな種類のドキュメントの翻訳をやってくれるが、それをどのような用途に使用するか、ということに関しては留意する必要がある。以下のようなケースでは特に注意。もちろんそれらに特化した翻訳会社もあるので、検討するのが望ましい。(そういった翻訳会社は当然価格が高くなる傾向にある。)

翻訳者は訳者であって文章の創作者ではないので、有能な翻訳者こそ、原文に忠実にあろうとする傾向があるのに注意する必要がある。

文芸作品

文芸作品の翻訳を頼む場合、そのまま出版できるクオリティのものは期待してはいけない。あくまでもあらすじをつかめるもの、ぐらいの認識でないといけない。これは簡単な話、訳者は訳者としての能力はあっても、文筆家であるとは限らないから。こういった作品の出版としての翻訳はそういった専門の知識を持った翻訳家に任せる必要がある。(反対に文芸作品の翻訳ができる人とというのは、翻訳言語で本が一冊書ける能力を持った人であるということ。)

意匠性の高いコピー

スローガンや、商品のキャッチコピー等。以前アップルの日本語キャッチコピーが直訳すぎると話題になったことがあったが、まさにあんな感じ。訳者はコピーライターではないのでどうしても直訳っぽくなってしまう。コピーライターがちゃんと書きなおせば、と思うだろうけど、そもそもコピーライターに原文を読解する能力があるとは限らないという問題もあり、特に異なる言語での一意性にこだわる会社(多分アップルもそう)だとジレンマになってしまうのではないかと思う。(まあ、これは会社のポリシーにも問題があるんだろうけど。)

契約書、法文書など、法的な文書の翻訳

契約書などの翻訳は一般的な翻訳の場合、その有効性・対応性に疑義が生じる可能性があるので注意。これは原文の地域と翻訳言語を使用する地域の法律が当然ながら違ってくるので、双方の法知識が必要になるため。

最後に

他のどのような仕事と同じように、納期、価格と品質のうち優先度を選べるのは2つまでであるので注意すること。安くて納期が速くかつ品質が高い仕事などというものはない。(良心的な翻訳家は品質を低くするような仕事は受けないのでここでは価格と納期のどちらかを選ぶ決断になる。ただし、無理な仕事を押し付けたり、不当に催促したりすると、当然の話、チェック時間などに取れる時間が短くなるので品質は低下することになる。)翻訳に関しては具体的に言うと、一日に捌ける仕事量というのは決まっているので、例えば、その限界に近い仕事を依頼すると他の仕事を止めたり、私用の時間を割いたりする必要が出てくるので当然価格が高くなる。なので、余裕を持ったスケジュールで臨むのが翻訳料を下げる方法の一つとなる。