オーディオ疑似科学

Tumblrの方で書いていたら長くなってきたのでこっちにブログの記事としてまとめます。

Tumblrで取り上げたのはこちらの記事。

JimmyJazz blog: USB-5はボッタクリ?

まず、このUSB-5という商品について調べてみることにしました。

公式ページがないようなので、Joshinのページの説明を引用。

音楽再生および録音専用に開発されたUSBメモリー

インターフェースはUSB2.0/1.1で、容量は4GB。個体メモリー本来の音質に悪影響を与える軽量な樹脂製のケースの共振を取り除くため、木製のケースを採用するなど、音質面で様々な配慮

CDなどから読み込んだ音楽ファイルをUSBメモリーに保存することが、「CDやハードディスクの回転系の揺れやノイズから開放されたデジタル音楽ファイルの素晴らしさを知る唯一の方法」との考えを持っている。しかし、市販されているUSBメモリーには音質面を考慮したものがないことから本製品を開発

ケースにはムクのチーク材と米松を使用し、音質に配慮した大きさと形状を採用

仕上げは整音のためにつや出し研磨を行わず、塗装とワックスがけも行っていない

メモリー本体にコンピューターの冷却ファンなどの振動を伝えないため、ケーブルが付属

ケーブルにも100%のウールを編んだ外被を採用するなど、音質劣化を最小にとどめるよう配慮

最大の効果を得るためにUSBコンバーター「USB-101」と組み合わせての使用を推奨

つまり、まとめると、「音質を向上させるためにUSBメモリーにかかる振動を軽減するために木を使用したUSBメモリー」ということですね。

じゃあ、何がおかしいのかを解していきましょうか。

基本的に音声データであれ、文書データであれ、0と1のバイナリデータで構成されています。つまり、ハードドライブであろうと、1000円で買ったUSBメモリーであろうと、はては2万円で買ったUSB-5であろうと、保存される対象はこのバイナリデータであるということには全く代わりがありません。USBメモリーに保存したデータは例えば010001010の配列であれば、取り出すときに010001010の配列で出てきます。例えばこれが011001010の配列で出てくると、USBメモリーとして不良品ということです。なぜなら、このように変化してしまうと保存した文書の内容が変わったり、ファイルが使えなくなったりとUSBメモリとして最低限の品質を保てていないからです。

これを踏まえて、USB-5が不良品でないと仮定すれば、本当にこれを使用することにより、音が本当に変化しているのであればそれはデータが改変されているということになります。つまり、音声内のデータ配列が変化しているということです。尚、通過するデータを改変する機械は確かに販売されています。これらはDSP(Digital Signal Processor)などと呼ばれ、USBメモリーとは明確に区別されている機械です。これらは主に音声信号の特性を変えて、一定の周波数を変化させたり、エコーなどの音声効果などをつけるために使用します。

話をUSB-5に戻します。

USB-5がデータを全く改変していないのであれば、この製品の使用によって音質が変わるのは全くあり得ないという話になります。というのも、これは「USBメモリーに保存した駄文の文書ファイルを取り出したら名作の文書ファイルになっていた」というのと全く同義だからです。USB-5がデータを改変しているのであれば、これはUSBメモリーとは言わずにDSPとして販売されるべきの商品です。また仮にそのような改変が発生しているのであれば、前述のように、保存したデータが変化なしに取り出せないということになりますので、USBメモリーとしては不良品であるということになります。

尚、品質の劣化が問題となるアナログの媒体に比べ、デジタル媒体というのは一般的にはデータがきちんと通信されている限りは劣化は理論上発生しません。もちろん、場合によってデータの欠落や破損などが発生することはありますが、これによって発生するのはデータ訂正、もしくは完全なデータの消失を意味します。(デジタル音声ケーブルの場合はこれが原因でポップノイズなどが乗ることがあります。)

以前にオーディオ店で、「流れる信号の品質が高いS/PDIF(同軸)ケーブル」なるものを薦められましたがこれも非常にミスリーディングな話です。高いケーブルは確かにノイズ耐性など、差はあるかもしれませんが、決して信号の品質に違いがあるわけではなく、これによって音質が変わってくるわけではなく、多大な電磁ノイズが発生している環境でそれによる途切れなどの影響が出るか出ないかの違いとなり、決して音質が良くなることはありません。(もっとも、もしそういう状況なのであれば光デジタルを使用するなど、他にできる対策は多数あるでしょう・・・・・・。)

まあ、プラシーボ効果を期待してUSB-5のような商品を買う人を止めやしませんが、最近こういう無知をつけ込んだ商品を開発・販売する人が多いことに非常に疑問を感じます。